台風の暗い雲と雨

事業継続力強化計画認定—費用ゼロで補助金加点や税制優遇も

7月に入り、今年も台風や集中豪雨のニュースが増える季節になりました。近年は毎年のように記録的な豪雨がどこかで発生しており、「うちの会社は被災したら事業を続けられるだろうか」と不安を感じたことのある経営者は多いはずです。

とはいえ、本格的なBCP(事業継続計画)の策定は大変そうで手が出ない。そんな中小企業のために用意されているのが、国の「事業継続力強化計画」認定制度です。費用をかけずに取得でき、防災対策の第一歩になるうえ、補助金の加点や税制優遇といった実利もある制度です。

事業継続力強化計画とは?BCPとの違い

事業継続力強化計画は、中小企業強靱化法に基づき、中小企業が自然災害や感染症などへの事前対策をまとめた計画を作成し、経済産業大臣の認定を受ける制度です。

本格的なBCPが「被災後も中核事業を継続・復旧させるための包括的な計画」であるのに対し、事業継続力強化計画は「災害への初動対応と事前対策」に絞り込んだ、いわばBCPの入門版です。計画に盛り込む内容は、ハザードマップによる自社拠点のリスク確認、発災直後の人員の安否確認や避難の手順、設備・データ・資金繰りといった経営資源を守るための対策、計画の訓練と見直しの方針などで、様式に沿って書けばA4数枚程度に収まります。

認定を受ける4つのメリット

1つ目は、補助金の審査での加点です。ものづくり補助金をはじめとする国の主要な補助金では、事業継続力強化計画の認定を受けていると審査で加点される場合があります。採択率を少しでも上げたい申請者にとって、費用ゼロで取れる加点項目は貴重です。

2つ目は、税制優遇です。認定計画に基づいて自家発電設備や制震・免震装置、排水ポンプといった防災・減災設備に投資した場合、特別償却による税制上の優遇を受けられる場合があります。※対象設備や償却率などの詳細は最新の制度情報をご確認ください。

3つ目は、金融支援です。日本政策金融公庫の低利融資や信用保証枠の追加など、認定事業者向けの資金調達支援が用意されています。

4つ目は、対外的な信用です。認定を受けると国のロゴマークを名刺や会社案内に使用でき、取引先や金融機関に対して防災意識の高い会社であることを示せます。サプライチェーンの強靱化が重視される中、大手企業が取引先の災害対応力を確認する動きも広がっており、認定の有無が取引の安心材料になる場面は増えています。特に建設業では、災害時の応急復旧を担う地域の建設会社への期待が大きく、防災への取り組みが会社の評価に直結しやすい業界といえます。

申請の流れ—電子申請で完結、費用はかからない

申請は専用の電子申請システムを通じて行い、認定まで含めてオンラインで完結します。申請手数料は無料です。作成にあたっては、中小企業庁が公開している手引きや記載例が充実しているため、自社の状況を整理しながら順に埋めていけば、初めてでも十分作成できます。標準的な審査期間はおおむね45日程度とされているため、秋の補助金公募での加点を狙うなら、夏のうちに申請しておくのが現実的なスケジュールです。補助金の申請と同時並行では間に合わないことが多いため、「いつか出すかもしれない補助金のために、先に取っておく」くらいの順序で考えておくのがちょうどよい制度です。

なお、計画の有効期間は認定から3〜5年で、期間が切れる前に更新(再申請)が必要です。取りっぱなしにせず、年に一度は訓練や見直しの機会を持つことで、計画が形だけのものになるのを防げます。訓練といっても大がかりなものである必要はなく、朝礼での安否確認テストや、連絡網が最新かどうかの確認だけでも立派な取り組みです。台風接近の予報が出たタイミングで計画を開いてみる、という運用を習慣にしている会社もあります。

計画には何を書く?具体的な中身のイメージ

実際に計画へ盛り込む内容を、建設業の会社を例にイメージしてみます。まず、事務所と資材置き場の所在地をハザードマップで確認し、荒川の氾濫時に浸水想定区域に入るかどうかを把握します。次に、発災直後の初動として、就業時間内・時間外それぞれの安否確認の方法(連絡網やチャットグループ)、集合場所、現場作業中の避難手順を決めます。

そのうえで、経営資源ごとの対策を整理します。人については救急用品の備蓄や安否確認訓練、モノについては重機・車両の高台への移動ルールやデータのクラウドバックアップ、カネについては損害保険の補償内容の確認や当面の運転資金の確保策、情報については顧客・協力会社の連絡先リストの複製保管、といった具合です。どれも特別なことではなく、「災害が来たらどうするか」を平時に文字にしておくだけで、計画としての体裁は十分に整います。

なお、この制度には複数の事業者が連携して認定を受ける「連携型」もあります。元請と協力会社、あるいは組合単位で申請すれば、地域や取引網ぐるみの防災体制として評価され、実効性も高まります。

東京の中小企業なら都の支援策もチェック

東京都もBCP・防災への支援に力を入れており、中小企業向けにBCP策定支援のセミナーや専門家派遣、防災・減災に資する設備投資への助成制度などを実施しています。国の認定制度で計画の骨格をつくり、都の助成制度で自家発電機や止水板といった具体的な設備投資につなげる、という組み合わせが東京の中小企業にとって王道の活用パターンです。※支援策の内容は年度により変わります。最新情報は東京都や東京都中小企業振興公社の公式サイトをご確認ください。

まとめ:防災対策の第一歩を「実利のある形」で

事業継続力強化計画は、災害への備えという本来の目的に加え、補助金の加点、税制優遇、金融支援、対外的な信用という実利がそろった制度です。費用がかからず、中小企業が防災に取り組む最初の一歩として、これほど始めやすい仕組みはありません。

当事務所では、事業継続力強化計画の作成・申請サポートを行っています。補助金申請とあわせた活用のご相談も可能ですので、台風シーズンを前に自社の備えを整えたい経営者の方は、お気軽にお問い合わせください。