この度、令和8年7月1日より、建設業法に関連する「建設業法施行規則」(昭和24年建設省令第14号)が一部改正され、経営事項審査の評価項目に重要な変更が加わります。本記事では、この改正の背景と具体的な内容、そして中小企業の経営者の方々が今後どのように対応すべきかについて、行政書士事務所の視点から詳しく解説します。
なぜ今、建設業法改正と経営事項審査が重要か
建設業界は、技能労働者の高齢化や若手入職者の減少、そして頻発する自然災害への対応など、多くの課題に直面しています。このような状況の中で、持続可能な建設業の実現と、地域の守り手としての災害対応力の強化は喫緊の課題です。今回の建設業法施行規則の一部改正は、これらの課題に対応するため、企業の取り組みを適正に評価し、業界全体の底上げを図ることを目的としています。
経営事項審査は、公共工事の入札に参加するために、建設業者の経営状況や技術力、その他の社会性等を客観的に評価する制度です。この審査結果は、企業の総合評定値(P点)として算出され、各社の競争力に直結します。そのため、今回の改正点を正確に理解し、適切に対応することが、今後の事業戦略を立てる上で極めて重要になります。
制度・内容の解説:改正のポイント
令和8年7月1日に施行される建設業法施行規則の改正では、主に以下の3つの項目が経営事項審査の「その他社会性」(W点)に影響を与えます。
1. 社会保険加入状況に関する審査項目の削除
これまで、雇用保険、健康保険、厚生年金保険の加入状況は、経営事項審査の評価項目の一つでした。しかし、令和2年10月の建設業許可要件の改正により、社会保険への加入が許可・更新の必須要件となったため、令和7年10月以降に審査を受ける企業は、許可要件として社会保険に加入していることが前提となります。
この背景から、今回の改正では、社会保険加入の有無に関する審査項目が削除されることになりました。これは、社会保険への加入が「当然の要件」となったことを反映したものであり、事務の効率化を図る側面もあります。
2. 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言状況の新設
「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」とは、国土交通省が実施するもので、建設技能者の育成・確保、処遇改善などに取り組む企業が、その具体的な方針を自主的に宣言する制度です。
今回の改正により、この自主宣言制度に登録し、宣言書と誓約書を提出している企業には、新たにW点(その他社会性)において加点されることになります。この項目は、建設業界が抱える人材不足問題への対策として、技能者の確保と定着を促進することを目的としています。最大5点の加点が評価されます。
3. 建設機械の保有状況における加点対象の拡大
災害発生時の迅速な応急復旧工事への対応力強化を目的として、経営事項審査における建設機械の保有状況の加点対象が拡大されます。具体的には、これまで加点対象外だった「不整地運搬車」や「アスファルト・フィニッシャ」が新たに加点対象となることが明記されています。これにより、より多様な災害対応機械の保有が評価されることになります。
また、「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況(建設キャリアアップシステム:CCUSの活用状況)」の加点配分も見直しされます。CCUSのさらなる普及と活用を促し、技能者の適正な評価と処遇改善に繋げることが期待されます。
中小企業・事業者への影響と対応ポイント
今回の改正は、建設業を営む中小企業の経営者の方々にとって、公共工事の受注機会や企業評価に直接影響を及ぼす可能性があります。以下に、対応のポイントを挙げます。
1. 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」への登録検討
公共工事の受注を検討している経営者の皆様は、自主宣言制度への登録を積極的に検討することをおすすめします。これにより、経営事項審査における加点が見込めるだけでなく、企業の社会的責任(CSR)への取り組みを対外的にアピールすることにも繋がります。登録には、具体的な取り組み内容の宣言と誓約書の提出が必要です。
2. 建設機械保有の見直しと災害対応力強化
不整地運搬車やアスファルト・フィニッシャなど、新たに加点対象となった建設機械の保有状況を確認し、必要に応じて導入を検討することも有効な戦略です。災害対応力の強化は、社会からの要請でもあり、企業の競争力向上に繋がる重要な要素と考えます。
3. 建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用推進
CCUSの活用状況は、引き続き経営事項審査の評価対象であり、加点配分の見直しも行われます。技能者の就業履歴や資格情報を適切に蓄積・活用することで、企業としての技術力と透明性を高めることができます。導入や運用の手間は確かにありますが、経審の点数アップを狙う事業者様はこれを機に再度検討してみてはいかがでしょうか。
4. 最新情報の継続的な確認
法律や制度の改正は今後も行われる可能性があります。国土交通省の公式サイトや関係省庁からの通知など、最新の情報を常に確認することが重要です。不明な点や具体的な手続きについては、専門家である行政書士に相談することをお勧めします。
まとめ
令和8年7月1日に施行される建設業法施行規則の一部改正は、経営事項審査に大きな影響を与えます。社会保険加入状況の審査項目削除、そして「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の新設、建設機械の加点対象拡大、CCUS加点配分の見直しは、持続可能な建設業の実現と、災害対応力強化に向けた国の強い意志を示すものです。
中小企業の経営者の皆様におかれましては、これらの改正内容を深く理解し、自社の事業戦略に適切に反映させることが、今後の成長と発展に不可欠であると考えます。特に、新たに加点対象となる取り組みには積極的に挑戦し、企業の競争力向上に繋げていただきたいと思います。


