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改正建設業法で見積書はどう変わった?労務費・工期のルールを今こそ見直すタイミング

材料費や燃料費の上昇が続く中で、「見積りを出しても、なかなか価格に反映してもらえない」「下請に出す際の労務費をどう考えればいいのか分からない」といった悩みを抱える建設業者の方は少なくないのではないでしょうか。2025年12月に全面施行された改正建設業法では、こうした価格交渉や労務費の取り扱いに関するルールが大きく見直されました。すでに施行から半年近くが経ちましたが、社内の見積書や契約書のフォーマットがまだ改正前のままになっている、という会社も意外と多いようです。今回は、改正建設業法で何が変わったのか、今からでも見直しておきたいポイントを整理します。

改正建設業法で何が変わったのか

今回の改正は、建設業界における材料費・労務費・その他の経費の適正な確保を目的としたもので、大きく分けて「見積書の内訳明示」「労務費の基準(標準労務費)」「工期の適正化」といったテーマに関するルールが整備されました。建設資材の価格が長期的に上昇を続ける一方で、その上昇分を下請や技能者の賃金に反映できていない、という業界全体の課題に対応するための見直しといえます。

これらのルールは、元請・下請といった立場にかかわらず、建設業を営むすべての事業者に関わるものです。「自分の会社は下請だから関係ない」「規模が小さいので対象外だろう」と考えている方も、一度自社の見積書や契約書を見直してみる価値があります。※改正の詳細・適用範囲については、国土交通省の公式発表を必ずご確認ください。

見積書に内訳を明示することが努力義務に

改正後は、建設業者が見積書を作成する際に、材料費・労務費・適正な施工を確保するために不可欠な経費(法定福利費や安全衛生経費、建設業退職金共済制度の掛金など)の内訳を記載するよう努めることが求められるようになりました。これは元請・下請のすべての契約に適用される努力義務です。

「努力義務だから対応しなくても問題ない」と考えてしまうと、取引先からの信頼を損ねたり、価格交渉の場で不利になったりする可能性があります。総額のみを記載した見積書では、発注者側も「どこまでが適正なコストなのか」を判断しづらく、結果として値下げ交渉の対象にされやすくなってしまうこともあるでしょう。内訳を明示することは、自社のコスト構造を発注者に正しく理解してもらうための材料にもなります。

なお、公共工事の入札に関しては取り扱いがより厳格になっている点に注意が必要です。国土交通省では2025年12月12日から、公共工事の入札金額についても材料費・労務費・適正な施工を確保するために不可欠な経費等の内訳を記載した工事費内訳書の提出を求めることとしており、この内訳書を提出しなかった入札や、記載内容に不備がある入札は無効(失格)として扱われることになっています。民間工事であれば「対応していないと不利になりやすい」という話で済みますが、公共工事の入札では、内訳の記載に漏れや誤りがあるだけでその場で入札から弾かれてしまうという、より直接的なリスクがあります。普段から公共工事の入札に参加している事業者は、提出する工事費内訳書のフォーマットや記載項目に不備がないか、改めて確認しておくことをお勧めします。

「標準労務費」と著しく低い労務費の禁止

もう一つの大きな変更点が、中央建設業審議会が勧告する「標準労務費」をめぐるルールです。改正後は、受注者が標準労務費に比べて著しく低い労務費を見積りに示すことや、発注者側が受注者に対して標準労務費より低い労務費での見積りを依頼することが、禁止される行為として位置づけられました。

これまで、価格競争の中で労務費が真っ先に削られる対象になってきた、という実態は否めません。今回の改正は、技能者の賃金水準を確保するための土台として、標準労務費という一つの基準を業界全体で共有しようという狙いがあります。自社が普段提示している見積りの労務費が、標準労務費と比べてどの程度の水準にあるのかを把握しておくことは、今後の価格交渉において重要な意味を持つようになるでしょう。

今から見直しておきたい社内の準備

改正法への対応として、まず取り組みやすいのは見積書や契約書のフォーマットの見直しです。これまで一式表記でまとめていた見積りについて、材料費・労務費・経費に分けた内訳を記載できる形式に変更しておくと、今後の取引で内訳を求められた際にもスムーズに対応できます。

  • 見積書のフォーマットに材料費・労務費・経費の内訳欄を追加する
  • 法定福利費・安全衛生経費・建退共掛金などの算出方法を社内で整理する
  • 自社が提示している労務費の水準を確認し、標準労務費との比較ができるようにしておく
  • 取引先(元請・下請)との契約書のひな形を、最新のルールに合わせて見直す

国土交通省では、改正後のルールに対応した標準見積書のひな形や契約書のひな形が公表されています。自社で一から作り直すのではなく、こうした公的なひな形を参考にしながら自社用にカスタマイズしていくのが効率的です。

対応を後回しにするとどうなるか

努力義務という言葉から、対応を後回しにしてしまう会社も出てくるかもしれません。しかし、元請企業や発注者の中には、改正法に対応した見積書の提出を取引の前提として求めるようになるところも出てくると考えられます。取引先から内訳の明示を求められた際に対応できないと、それだけで取引上不利な立場に置かれてしまう可能性もあります。

また、標準労務費を大きく下回る労務費での見積りや依頼は禁止行為とされていますので、知らないうちに法令に触れるような取引を続けてしまうリスクもあります。改正法の内容を正しく理解し、社内の書式や契約の進め方を見直しておくことは、今後の取引を円滑に進めるための備えとしても重要です。

工期の適正化にも目を向けておく

今回の改正では、見積りや労務費のルールに加えて、工期に関するルールの見直しも行われています。建設工事の適正な施工を確保するためには、現実的な工期が確保されていることが前提になりますが、これまでは発注者側の都合で短い工期が設定されてしまい、結果として現場に過度な負担がかかるケースも見られました。改正後は、こうした工期の設定についても、適正な施工が可能な期間を考慮することが求められるようになっています。

見積りの段階で材料費・労務費・経費の内訳を明示することは、適正な工期を確保するための根拠を示すことにもつながります。たとえば、必要な作業員の人数や工程にかかる時間を労務費の内訳から説明できれば、発注者側に対して「この工期では対応が難しい」という主張にも説得力が増します。見積書の見直しと工期に関する協議は、セットで考えていくとよいでしょう。

まとめ

2025年12月に全面施行された改正建設業法は、見積書への内訳明示や標準労務費をめぐるルールなど、建設業者の価格交渉や契約の進め方に関わる重要な変更を含んでいます。施行から時間が経っているからこそ、自社の対応状況を改めて振り返ってみる良いタイミングではないでしょうか。

見積書や契約書のフォーマットをどのように見直せばよいか、自社の取り組みが改正法に適合しているかどうかなど、お困りの点があれば当事務所にお気軽にご相談ください。