建設業許可を取得したばかりの経営者の方から、「主任技術者と監理技術者はどう違うのか」「専任と言われたが、他の現場を掛け持ちしてはいけないのか」といったご質問をいただくことがよくあります。配置技術者に関するルールは建設業法の中でも実務に直結する部分ですが、条文だけを読んでもわかりにくいと感じる方が多いようです。今回は、主任技術者・監理技術者の基本的な違いと、2025年2月に改正された専任に関する金額基準について整理します。
主任技術者と監理技術者の違い
建設業法では、工事現場に技術者を配置することが義務づけられています。主任技術者は、建設業許可を持つすべての建設業者が、すべての工事現場に配置しなければならない技術者です。元請・下請を問わず、また工事金額の大小にかかわらず、必ず置く必要があります。
一方の監理技術者は、発注者から直接工事を請け負った元請(特定建設業者)が、一定金額以上の下請契約を締結して工事を施工する場合に、主任技術者に代えて配置しなければならない技術者です。監理技術者には、主任技術者よりも上位の資格や実務経験が求められ、下請を含めた現場全体の施工を管理する立場になります。つまり、自社が元請かどうか、そして下請に出す金額の規模によって、主任技術者で足りるのか、監理技術者が必要になるのかが変わってくるということです。
「専任」とはどういうことか
配置技術者には、現場に「専任」で置かなければならない場合と、他の現場と兼任できる場合があります。専任が求められるのは、公共性のある施設や工作物、あるいは多数の人が利用する施設など、重要性の高い工事のうち、請負代金の額が一定の基準を超えるものです(個人住宅の工事は対象外です)。専任とされた技術者は、原則としてその工事現場に常駐し、他の工事現場を掛け持ちすることができません。ひとりの技術者を複数の現場で使い回すようなことは、専任が求められる工事では認められないということです。
2025年2月の改正で金額基準が引き上げ
2025年2月1日の建設業法改正により、配置技術者に関する金額基準が見直されました。監理技術者の配置が必要となる下請契約の総額の基準は、4,500万円から5,000万円に引き上げられました(建築一式工事の場合はこれより高い基準額が設定されており、改正後は8,000万円となっています)。あわせて、専任が必要となる請負代金額の基準も、4,000万円から4,500万円に引き上げられています。
この改正は、近年の資材価格や労務費の高騰によって、実質的な工事の規模が変わらないにもかかわらず、金額基準だけが据え置かれていると、以前は専任が不要だった工事まで専任扱いになってしまうという実情を踏まえたものです。物価上昇に応じて基準額を見直すことで、実態に即した運用を目指した改正だといえます。自社が受注している工事が、この基準の見直しによって専任の要否がどう変わるのか、あらためて確認が必要です。
金額の基準がいくつも出てきて混乱しやすいところなので、改正前後を一覧にしておきます。
| 区分 | 改正前 | 改正後(2025年2月1日〜) |
|---|---|---|
| 専任が必要になる請負代金額(建築一式工事以外) | 4,000万円以上 | 4,500万円以上 |
| 専任が必要になる請負代金額(建築一式工事) | 8,000万円以上 | 9,000万円以上 |
| 監理技術者の配置が必要になる下請契約の総額(建築一式工事以外) | 4,500万円以上 | 5,000万円以上 |
| 監理技術者の配置が必要になる下請契約の総額(建築一式工事) | 7,000万円以上 | 8,000万円以上 |
ICT活用による兼任制度の新設
今回の改正では、金額基準の見直しとあわせて、情報通信機器を活用するなど一定の要件を満たす工事について、専任が必要な現場であっても技術者の兼任を可能にする制度が新設されました。人手不足が深刻化するなかで、限られた技術者をより効率的に配置できるようにする狙いがあります。ただし、兼任が認められるためにはICT活用などの要件を満たす必要があり、無条件にすべての現場で兼任できるわけではありません。制度の詳しい適用要件については、国土交通省が公表している資料で最新の内容をご確認ください。
下請の特定専門工事における特例もある
配置技術者のルールには、下請工事における特例も設けられています。一定の要件を満たす「特定専門工事」(鉄筋工事や型枠工事など)については、下請負人が主任技術者を配置しなくても、元請の技術者が一定の条件のもとで下請工事の技術上の管理を兼ねられる特例があります。これは、専門工事の下請が慢性的に技術者不足に悩まされている実情を踏まえた仕組みです。すべての工事に使える特例ではなく、対象となる業種や請負金額に条件がありますので、自社の下請工事が対象になるかどうかは個別に確認が必要です。
実務での注意点
専任が必要な工事に技術者を配置する際は、その技術者が工事期間中、他の現場の主任技術者・監理技術者を兼ねていないかを確認する必要があります。特に技術者の人数が限られる中小建設会社では、複数の現場を同時に受注した際に、専任配置が可能な技術者が足りているかどうかが、受注できる工事の規模そのものを左右することもあります。受注計画を立てる段階で、どの技術者をどの現場に専任させるかをあらかじめシミュレーションしておくと、後になって技術者が足りないという事態を防ぎやすくなります。
資格・経験要件も忘れずに確認を
金額基準や専任・兼任の話に目が行きがちですが、そもそも主任技術者・監理技術者になるためには、業種ごとに定められた資格や実務経験の要件を満たしている必要があります。監理技術者については、監理技術者講習を受講し、監理技術者資格者証の交付を受けていることも求められます。せっかく受注できる工事の規模が広がっても、要件を満たす技術者が社内にいなければ、その工事を受けることはできません。金額基準の見直しにあわせて、自社の技術者が保有する資格や実務経験の棚卸しをしておくこともおすすめします。
まとめ―基準改正を機に自社の配置体制を見直す
主任技術者・監理技術者の専任要件は、建設業許可を持つすべての会社に関わる基本的なルールです。2025年2月の金額基準改正やICT活用による兼任制度の新設により、実務上の対応にも変化が生じています。自社が受注する工事の規模や体制にあわせて、配置技術者のルールを今一度確認しておくことをおすすめします。
当事務所では、建設業許可の取得・更新はもちろん、配置技術者に関するご相談も承っています。技術者の配置でお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
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