経営事項審査(経審)について調べていると、Y点やZ点、W点といったアルファベットが次々に出てきて、結局どこから手をつければよいのかわからなくなってしまう、という方も多いのではないでしょうか。経審のP点(総合評定値)は、X1・X2・Y・Z・Wという5つの評価項目の組み合わせで決まります。今回は、そのうちのX1点・X2点、つまり会社の「経営規模」を表す2つの項目について解説します。
経審の5つの評価項目とP点の関係
経審の総合評定値であるP点は、X1(完成工事高)、X2(自己資本額及び利益額)、Y(経営状況)、Z(技術力)、W(社会性等)という5つの評価点数を、それぞれ決められた割合で組み合わせて算出されます。おおまかな計算式は「P=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W」というもので、X1とZ(技術力)の比重が特に大きいことがわかります。今回取り上げるX1とX2をあわせると、全体の4割を占めることになり、会社の規模そのものがいかに重視されているかがうかがえます。
X1点―完成工事高評価点とは
X1点は、業種別の完成工事高、つまりその会社がどれだけの工事を実際に完成させてきたかを示す指標です。建設業の許可業種は29業種ありますが、経審のX1点は業種ごとに分かれて評価されるため、複数の業種で許可を取得している会社は、それぞれの業種の完成工事高に応じて点数が算出されます。
完成工事高は、審査基準日の直前2年間の平均か、直前3年間の平均かを会社側が選択できます。工事の受注状況に波がある会社であれば、3年平均を選ぶことで急激な変動の影響を緩和できる場合があります。逆に、直近で完成工事高が大きく伸びている会社であれば、2年平均を選んだほうが有利になるケースもあります。どちらを選ぶべきかは、過去の実績を踏まえてシミュレーションしてみることをおすすめします。
X2点―自己資本額と利益額で決まる経営規模評点
X2点は、自己資本額点数と平均利益額点数の平均で算出されます。自己資本額とは、貸借対照表上の純資産合計のことで、審査基準日の額と、その2期平均のいずれか高いほうを選択できます。もうひとつの平均利益額は、営業利益に減価償却実施額を加えた「利払前税引前償却前利益」の2期平均で計算されます。つまりX2点は、単に売上や利益が大きければよいというものではなく、財務基盤の厚みと、日々の事業活動から生み出す利益体質の両方を見ている評価項目だといえます。
X1・X2を上げるために取り組めること
X1点を上げるには、単純に完成工事高を伸ばすことが基本になりますが、業種区分ごとに評価される仕組み上、主力業種に工事実績を集中させることで、その業種の点数を効率的に伸ばせる場合があります。一方でX2点については、内部留保を厚くして自己資本額を積み増していくことや、無駄なコストを見直して利益体質を改善していくことが有効です。増資による自己資本の増強も選択肢のひとつですが、税務上の影響もあわせて検討する必要がありますので、税理士とも相談しながら進めるとよいでしょう。
いずれも一朝一夕に改善できるものではなく、数年単位での経営計画のなかで意識的に取り組んでいく必要がある項目です。決算の数字がそのまま点数に直結する以上、日々の経営そのものがX1・X2対策になっているという意識を持つことが大切です。
複数業種を持つ会社が注意したいこと
複数の建設業許可を保有し、いくつもの業種で入札に参加している会社の場合、X1点は業種ごとに算出されるため、主力ではない業種の完成工事高が少ないと、その業種のX1点は低く抑えられてしまいます。すべての業種で同じように高い点数を狙うのではなく、入札に参加したい業種、受注を伸ばしたい業種を絞り込み、そこに完成工事高を集中させていく戦略が有効な場合があります。逆に、あまり実績のない業種の許可をそのまま維持し続けることが、必ずしも経営上プラスになるとは限りません。自社が今後どの業種で公共工事を受注していきたいのかを整理したうえで、業種ごとの経審対策を考えることが大切です。
経営規模等評価結果通知書で確認できること
経審を受けると「経営規模等評価結果通知書」が発行され、そこにX1点・X2点をはじめとする各項目の点数が記載されます。この通知書を見れば、自社が他の項目と比べてX1・X2のどちらに強みや弱みがあるのかを客観的に把握できます。過去数年分の通知書を並べて比較してみると、完成工事高や自己資本額の推移がどのように点数へ反映されてきたかを確認でき、次の決算に向けた対策を立てる際の材料になります。毎年なんとなく経審を受けるだけでなく、通知書の中身までしっかり確認する習慣をつけておくとよいでしょう。
Y点・Z点・W点とのバランスも忘れずに
X1・X2は会社の規模を表す指標である一方、経審全体としては、財務の健全性を見るY点、技術者数や技能者のレベルを見るZ点、社会保険加入状況やCCUS活用などを見るW点も、それぞれ大きな比重を占めています。規模を追い求めるあまり無理な借入や急拡大を行うと、かえってY点を下げてしまうこともあります。X1・X2の対策は、他の評価項目とのバランスを見ながら、自社にとって最も効率よく総合点を伸ばせる方法を選ぶことが重要です。
まとめ―決算対策は経審対策そのもの
経審のX1点・X2点は、完成工事高と自己資本額・利益額という、いわば会社の「体力」を測る評価項目です。決算の数字が直接点数に反映されるため、公共工事の受注拡大を目指すのであれば、日頃の経営判断そのものが経審対策になっているという視点を持つことが欠かせません。決算を締めてから慌てて対策を考えるのではなく、決算の数か月前から見通しを立てておくことが、結果的に点数の底上げにつながります。
当事務所では、経審の申請手続きだけでなく、点数のシミュレーションや、業種選択・完成工事高の振り分け方についてのご相談も承っています。次の決算に向けた対策から早めに検討されたい方も、お気軽にご相談ください。



