「熱中症対策の義務化から2度目の夏へ―2026年、建設業者が今あらためて確認すべきこと」のアイキャッチ画像

熱中症対策の義務化から2度目の夏へ―2026年、建設業者が今あらためて確認すべきこと

この数日は比較的涼しい日々が続いていますが、夏本番を迎え、現場での暑さ対策にあらためて頭を悩ませている建設業の経営者の方も多いのではないでしょうか。2025年6月、労働安全衛生規則が改正され、熱中症対策が事業者の「義務」となりました。この夏で、義務化から2度目の夏を迎えることになります。1年目は制度への対応そのものに追われた会社も多かったと思いますが、2年目となる今年は、行政による指導や監督がより本格化してくると見られています。今回は、あらためて義務化の内容を整理しながら、2026年の夏に確認しておきたいポイントをまとめました。

なぜ建設業でこれほど熱中症対策が重視されるのか

屋外での作業が中心となる建設業は、もともと熱中症による労働災害が多い業種のひとつです。近年は夏の気温そのものが年々厳しさを増しており、真夏日・猛暑日の日数も増加傾向にあります。屋内で空調の効いた環境で働く業種と異なり、現場では日差しや照り返し、防護具の着用による熱のこもりなど、体感温度をさらに押し上げる要因が重なります。こうした背景から、国としても建設業をはじめとする屋外作業を伴う業種に対して、対策の徹底を強く求める流れになっています。今回の省令改正は、こうした構造的なリスクに正面から対応するためのものだといえます。

熱中症対策の何が「義務」になったのか

今回の改正で義務化されたのは、WBGT値(暑さ指数)が28度以上、または気温31度以上の環境で、連続1時間以上、あるいは1日4時間を超える作業を行う場合の対応です。具体的には、事業者に対して大きく3つの取り組みが求められています。ひとつは、作業者本人や周囲が熱中症の自覚症状・異変に気づいた際に、速やかに報告できる体制の整備です。もうひとつは、その報告を受けてから重篤化を防ぐまでの対応手順をあらかじめ作成しておくことです。そして最後に、これらの体制や手順を関係する作業者全員に周知しておくことが求められます。

あわせて、現場ではWBGT値の把握や測定、休憩場所の確保、水分・塩分補給の準備といった実務的な対応も欠かせません。単に「気をつけましょう」という掛け声だけでなく、体制と手順を文書として残しておくことが、今回の改正のポイントだといえます。口頭での注意喚起だけに頼っていた現場は、この機会に一度、書面としての整備状況を見直しておく必要があります。

対応を怠るとどうなるか―罰則と行政の動き

この義務に違反した場合、労働安全衛生法第119条により、6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となり得ます。制度が始まった1年目は、現場への周知や理解を広げる期間という側面もありましたが、2年目となる今年は、労働基準監督署による立入調査などを通じて、実際の運用状況がより厳しくチェックされる場面が増えてくると考えられます。

万が一、是正勧告や指導を受けるようなことがあれば、それ自体が会社としての信用に関わりますし、公共工事を受注している会社であれば元請からの評価にも影響しかねません。特に、複数の下請業者が入る現場では、元請が現場全体の安全衛生管理について一定の責任を負う立場にあります。「うちは大丈夫」と思い込まず、体制が書面として整っているかどうか、今一度見直しておく時期に来ています。

現場で実際に何を準備すればよいか

実務としてまず取り組みたいのは、WBGT測定器を現場に設置し、測定結果を記録に残すことです。次に、熱中症が疑われる状況が発生した際の対応フロー(誰が気づき、誰に報告し、どう搬送するか)を文書化しておくことが挙げられます。加えて、朝礼などの場で作業員全員に周知・教育を行うこと、休憩所や冷却設備、経口補水液などをあらかじめ準備しておくことも欠かせません。

忘れがちなのが、下請業者や一人親方も含めた現場全体での周知です。元請には現場全体の安全衛生に対する一定の責任が及びますので、自社の従業員だけでなく、現場に入るすべての関係者に対応を徹底しておく必要があります。作業員名簿や安全書類のなかに、熱中症対応の体制や緊急連絡先を明記しておく会社も増えてきています。日々の安全書類の作成・管理とあわせて、こうした情報を整理しておくと、いざというときに慌てずに対応できます。

また、猛暑日が続くことを見越して、作業時間そのものを見直す動きも広がっています。早朝から作業を始めて日中の最も暑い時間帯を避けたり、屋内作業と屋外作業を組み合わせて熱負荷を分散させたりといった工夫も、現場ごとの実情に応じて検討する価値があります。

費用面の負担は助成金で軽減できる場合がある

空調服やファン付き作業着、冷却設備、休憩スペースの整備などにかかる費用については、厚生労働省が実施する職場環境改善計画助成金など、国の助成制度の対象となる場合があります。対象となる設備や助成額は年度によって変わることがありますので、活用を検討する際は、最新の情報を厚生労働省や最寄りの労働局、あるいは社会保険労務士の先生にご確認いただくことをおすすめします。義務化への対応と費用負担の軽減を、あわせて計画的に進めていくとよいでしょう。

1年目と2年目で何が変わるのか

制度が始まった2025年の夏は、多くの会社にとって「まず体制を形にすること」自体が精一杯だったのではないでしょうか。書式だけ整えて終わっていたり、現場によって周知の徹底度合いにばらつきがあったりするケースも見られました。2年目となる今年は、こうした初期対応の実効性が問われる段階に入ります。体制はあるが実際には機能していない、という状態が最もリスクが高いといえます。定期的に手順を見直し、実際の現場できちんと運用されているかを確認する仕組みそのものを、社内に根付かせていくことが求められます。

まとめ―「知らなかった」では済まされない段階に

熱中症対策の義務化は、施行から2年目を迎え、いよいよ運用が本格化していく段階に入ります。体制整備や手順の文書化、周知の徹底といった基本を、あらためて自社の現場で確認しておくことが大切です。費用負担が気になる場合は、助成金の活用もあわせて検討してみてください。

当事務所では、建設業許可や経営事項審査をはじめ、建設業に関する各種手続きを幅広くお手伝いしています。安全書類の整備や現場体制の整え方など、お困りの際はお気軽にご相談ください。