ものづくり補助金で設備を導入し、補助金の入金も終わってひと安心。そう思っていた矢先に事務局から「事業化状況報告」の案内が届いて戸惑った、という声をよく伺います。「実績報告はもう出したはずなのに、まだ何か出すの?」というお問い合わせをいただくこともあります。
ものづくり補助金では、補助事業が終わったあとも数年にわたって状況を報告する義務が続きます。名称は「事業化状況・知的財産権等報告書」。忘れると補助金の返還を求められる可能性もある手続きです。今回は、この報告書の中身と期限に絞って整理します。
実績報告と事業化状況報告は別物です
まず混同されやすいところから整理します。補助事業の期間が終わった直後に提出するのが「実績報告」です。計画どおりに設備を購入し支払いを済ませたことを証拠書類とともに示すもので、これが受理されて初めて補助金額が確定し、入金へと進みます。補助事業そのものの精算手続きです。
一方の事業化状況・知的財産権等報告書は、補助金が入金されたあとの話です。導入した設備で事業が育っているのか、売上や利益はどう推移しているのかを毎年振り返って報告します。「実績報告を出したから終わり」ではありません。
報告期間は毎年4月1日から5月31日に固定されています
ものづくり補助金の事業化状況報告で特徴的なのが、受付期間が暦で固定されている点です。事務局の資料では、システムへの入力可能期間として毎年4月1日から5月31日までが示されています。
事業再構築補助金は事業者ごとの決算日を基準に報告時期が決まりますが、ものづくり補助金は決算期に関係なく全事業者が同じ春の期間に報告します。両方を受けている場合はとくに注意が必要です。
回数は、事業計画の年数にかかわらず、1回目の報告から5年間で合計6回とされています。1回出せば終わりではありません。
初回がいつになるかは、補助金の額の確定を受けた時期で決まります。2月末までに確定を受けたなら次に迎える4月〜5月が最初の報告、3月以降に確定を受けたなら翌年の4月〜5月が初回です。ここを一年勘違いすると、出したつもりで出していない状態になりかねません。※取り扱いは変更されることがありますので、実際のスケジュールは事務局の案内でご確認ください。
報告書には何を書くのか
報告の中心は事業化の状況です。補助金で導入した設備や開発した製品・サービスが現在どの段階にあるのか、すでに販売しているのか、試作段階なのか、社内利用にとどまっているのかを記載します。
あわせて、補助事業に係る売上高や営業利益などの実績を数字で報告します。決算数値との整合が求められる部分なので、決算書を手元に置いて記入することになります。
知的財産権の項目もあります。補助事業に関連して特許や実用新案、意匠、商標などを出願・取得した場合はその内容を記載し、該当がなければ「なし」で問題ありません。
給与支給総額や事業場内最低賃金の状況も報告項目です。申請時に掲げた賃上げの目標を達成できているかが、この報告を通じて確認されます。
あわせて用意する書類
報告書だけを作れば済むわけではありません。手元から集めてくる必要があるのは、直近の決算書と、報告年3月分の賃金台帳の2つです。報告書そのものは報告システムの画面で入力していく形になります。
意外と見落とされやすいのが賃金台帳です。事業再構築補助金では採択枠によって要否が分かれますが、ものづくり補助金では報告年3月分の賃金台帳が報告内容に挙がっています。事業場内最低賃金の確認が3月時点で行われるためで、事業化状況と給与支給総額は直近決算、知的財産権等と事業場内最低賃金は3月時点、と確認の基準時点が分かれています。
この賃金台帳が、実務でいちばん手間のかかるところです。マニュアルで指定された項目が台帳上に表示されている必要があり、給与ソフトの標準の出力そのままでは項目が足りないことがあります。また、労働者全員分と、事業場内最低賃金の対象になる方の分とで、PDFを分けて登録するよう求められる場合もあります。以前は年度によって賃金台帳の添付が不要なこともありましたが、現在は基本的に必要になるものと考えて準備しておくほうが安全です。※様式や登録方法の指定は年度によって見直されますので、実際の提出前に必ず事務局の最新のマニュアルをご確認ください。
売上が立っていなくても報告は必要です
誤解が多いのがこの点です。「事業化していないのだから報告するものがない」と考えて提出を見送るケースがありますが、事業化が進んでいない状況そのものが報告の対象であって、義務がなくなるわけではありません。
むしろ、計画が遅れている状況こそ、その理由と今後の見通しを率直に書くことが求められます。未入力のまま、あるいは完了ボタンを押さず入力中のまま放置すると、達成・未達成の判定ができないため返還を求められる対象になるとされています。数字が思わしくないときほど、期限内に出し切ることを優先してください。
なお、補助事業によって収益が生じた場合には、その一部を国に納付する「収益納付」という仕組みがあります。事業化状況報告の内容をもとに判断されるため、報告と無関係ではありません。計算方法は複雑なので、別の機会に取り上げます。
3月のうちに書類を揃えておくと楽になります
4月から5月は、多くの会社にとって落ち着かない時期です。3月決算なら決算作業の真っ最中ですし、そうでなくても年度替わりで人の出入りや取引先対応が重なります。そこに報告書の作成が乗ると、後回しのまま5月末が近づく、という展開になりがちです。
そこで、3月のうちに必要書類を集めておくと、あとが楽になります。直近の決算書類と3月分の賃金台帳、それに前年の報告書の控えがあれば、数字の連続性を確認しながら書き進められます。事務局からは毎年3月初旬に事前の通知メールが届きますので、これが来たら書類集めを始める、と決めておくと動きやすいと思います。
まとめ
ものづくり補助金の事業化状況・知的財産権等報告書は、毎年4月1日から5月31日という固定された期間に、1回目から5年間で合計6回提出するものです。記載するのは事業化の進み具合、売上高や営業利益の実績、知的財産権の状況、雇用と賃金の状況。手元から用意するのは直近の決算書と報告年3月分の賃金台帳です。売上が立っていない場合でも報告義務は残るという点も、あらためて確認しておきたいところです。※報告期間や必要書類の詳細は変更されることがあります。最新情報は事務局の公式サイトでご確認ください。
当事務所では、事業化状況報告のサポートとして、必要書類の洗い出しから記載内容の整理までお手伝いしています。「毎年やっているけれど自社の書き方で合っているか不安」といったご相談も歓迎です。これから補助金の活用をお考えの方は、補助金申請サポートのページもご覧ください。東京都台東区の行政書士事務所ONEが、申請から報告まで通して承ります。



