「今年もものづくり補助金に申請しようと思っていたのに、いつの間にか制度が変わっていた」。最近、そんな声を耳にすることが増えました。長年中小企業の設備投資を支えてきたものづくり補助金は、2026年5月8日の第23次公募をもって申請受付を終了し、新たな枠組みへと生まれ変わっています。名前も仕組みも変わったとなると、何をどう申請すればよいのか戸惑う経営者の方は少なくないはずです。今回は、2026年6月29日に第1回公募要領が公開された新制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」について、これまでとの違いを中心に整理してみます。
ものづくり補助金と新事業進出補助金が統合された背景
今回の制度改編でまず押さえておきたいのは、これまで別々に運用されていた「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称ものづくり補助金)」と「中小企業新事業進出補助金」が一本化されたという点です。前者は新製品開発や生産性向上のための設備投資を、後者は既存事業とは異なる新市場への展開を支援する制度でした。両制度は狙いが近い部分もあり、支援の重複や使い分けの分かりにくさが指摘されていたこともあってか、今回「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」という一つの制度に統合されています。第1回公募は2026年8月31日に申請受付が始まり、締切は同年9月30日18時とされていますが、この点も含めて詳細は必ず中小企業庁の公式発表でご確認ください。長年ものづくり補助金を活用してきた事業者にとっては、名称だけでなく申請の枠組みそのものが変わるため、これまでと同じ感覚で準備を進めると戸惑う場面が出てくるかもしれません。
申請枠は3つ、目的に応じて選ぶ形に
新制度では申請枠が「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3つに整理されています。革新的新製品・サービス枠は、これまでのものづくり補助金の中核だった設備投資型の支援を引き継ぐもので、新製品・新サービスの開発や生産プロセスの改善に取り組む事業者が対象です。新事業進出枠は、既存事業とは異なる高付加価値な新市場への進出を後押しする枠で、旧・中小企業新事業進出補助金の考え方をほぼそのまま受け継いでいます。グローバル枠は海外直接投資や海外市場開拓、インバウンド需要の取り込みといった海外展開に特化した枠で、渡航費や通訳費、翻訳費なども補助対象になる点が特徴です。どの枠に該当するかによって申請書類や審査で見られるポイントも変わってくるため、まずは自社の取り組みがどの枠の趣旨に近いかを整理するところから始めることになりそうです。
補助率・補助上限額はどう変わったか
気になる補助率や上限額についても、枠ごとに設計が異なります。革新的新製品・サービス枠は、従業員数に応じて基本の補助上限額が750万円から2,500万円程度まで段階的に設定されており、賃上げに取り組む場合の特例を使うとさらに上限が引き上げられる仕組みになっているようです。補助率は中小企業者で2分の1、小規模事業者などは3分の2が基本とされています。新事業進出枠は上限額が最大7,000万円、賃上げ特例適用時は最大9,000万円まで拡大されるとの情報もあり、旧制度より思い切った投資がしやすくなった印象です。グローバル枠は補助率が一律3分の2とされる点も特徴といえます。ただし、これらの数値は公募要領の版によって変更される可能性があるため、実際に申請を検討する際は必ず最新の公募要領で数字を確認してください。
申請にあたって気をつけたいこと
制度統合にともなって、事業計画の要件にも変化が見られます。複数の情報源で、3〜5年の事業計画期間中に付加価値額の年平均成長率を一定水準以上にすることや、給与支給総額の増加、地域別最低賃金を一定額以上上回る水準の賃金設定といった賃上げ関連の要件が共通して求められる方向性が示されています。従来のものづくり補助金に慣れている方ほど、様式や必要書類が変わっている可能性がある点には注意が必要です。設立から1年未満の事業者や、直近の課税所得が一定額を超える大企業に近い法人など、対象外となる要件も細かく定められているため、自社が対象になるかどうかの確認も早めに行っておきたいところです。第1回公募の締切までは限られた時間しかなく、事業計画書の作成にはある程度の準備期間が必要になります。また、認定支援機関の確認書が必要になる点や、電子申請システム(GビズIDプライムの取得が前提となる場合が多い点)は従来制度から引き続き求められる可能性が高いため、まだIDを取得していない事業者は早めに手続きを進めておくと安心です。旧制度で採択実績がある事業者であっても、新制度では審査項目や加点要素が見直されていることも考えられるため、過去の申請書をそのまま流用するのではなく、最新の公募要領に沿って内容を作り直す姿勢が求められます。
どの枠を選ぶか迷ったときの考え方
実際に相談を受けていると、「うちの取り組みはどの枠に当てはまるのか」という質問が最も多く出てきます。目安としては、既存の製品やサービスの延長線上で新しい機械を導入し生産性を高めたいのであれば革新的新製品・サービス枠、これまで手がけていなかった商品やサービスで新しい顧客層を開拓したいのであれば新事業進出枠、海外への販路拡大や海外拠点の設立を視野に入れているのであればグローバル枠という整理になりそうです。ただし実際の取り組みは複数の枠にまたがることも多く、どの切り口で計画を組み立てるかによって採択の可能性や補助上限額も変わってきます。自己判断だけで枠を決めてしまうと、本来受けられたはずの支援を取りこぼしてしまうこともあるため、迷った際は専門家に相談しながら方向性を固めていくのも一つの方法です。
まとめ
ものづくり補助金は姿を変え、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」として新しいスタートを切りました。設備投資中心の支援から、新分野展開や海外展開まで幅広くカバーする制度へと守備範囲が広がった一方で、申請枠の選び方や要件の細部は従来より複雑になっている面もあります。制度が新しく情報が流動的な部分もあるため、数値や条件については中小企業庁の公式サイトでの最新確認を欠かさないようにしてください。具体的に何を準備すればよいかは、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募が公開!8月31日の受付開始までに準備すべきこと」で詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の制度概要や申請枠ごとの要件については、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の申請サポートのページで詳しくご案内しています。
当事務所では、これまで数多くのものづくり補助金の申請支援に携わってきた経験を踏まえ、新制度についても情報を随時アップデートしながらサポートしております。「自社はどの枠に当てはまるのか分からない」「事業計画書の作成に不安がある」といったお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。制度の内容を丁寧に整理したうえで、皆様の状況に合った申請の進め方を一緒に考えさせていただきます。



