建設業許可の準備を進めていると、最後まで悩みの種として残りやすいのが「うちの事務所は営業所として認めてもらえるのだろうか」という点です。自宅の一室、マンションの一室、作業場の隅の机。そうした形で長く商売を続けてこられた会社さんほど、この不安は大きいと思います。そのうえ申請の段階では営業所の写真を求められ、何をどう撮ればよいのか見当がつかない、という声もよく聞きます。
この記事では、東京都都市整備局が公表している「建設業許可申請・変更の手引き」(令和8年度版)の記載をもとに、営業所という場所の要件と写真の撮り方を整理します。
建設業法でいう「営業所」とは何か
建設業法上の営業所は、請負契約の締結に関する実体的な行為、つまり見積り・入札・契約を行う事務所を指します。建設業法施行令第1条でも「常時建設工事の請負契約を締結する事務所」と定められています。
逆にいえば、単なる登記上の本店にすぎないもの、建設業と無関係な支店、請求や入金など事務作業だけを行う事務所や事務連絡所、工事作業員が詰める工事現場事務所や作業所、資材置場は営業所に当たりません。「登記した住所だから営業所でしょう」という思い込みが最初のつまずきになりがちです。一方で、他の営業所に対して請負契約に関する指導監督を行うなど、建設業の営業に実質的に関与している事務所であれば営業所に該当するとされています。
営業所として求められる実体
手引きは、営業所が備えるべき要件を6つに整理しています。外部から来客を迎え入れ、請負契約の締結等の実体的な業務を行っていること。電話・机・各種事務台帳等を備え、契約の締結等ができるスペースがあり、他法人や他の個人事業主の事務室とは間仕切り等で明確に区分されていること。常勤役員等(経管)または令3条の使用人が常勤していること。営業所技術者等(専技)が専任の者として常勤していること。営業用事務所としての使用権原を有していること。看板・標識等で、外部から建設業の営業所であることが分かる表示があること。
個人の住宅にある場合は、居住部分と適切に区別され独立性が保たれていることが必要です。電話は、名刺や封筒等で確認できる業務用の携帯電話でも可とされています。
営業所写真は何をどう撮るのか
手引きには営業所写真の撮影要領が示されています。用紙はA4で、1枚あたり4枚を目安に写真を貼り、撮影した年月を記入します。都内の主たる営業所・従たる営業所のそれぞれについて用意します。
撮る対象は3つに分かれます。1つめは建物の全景等で、営業所が入る建物の全景、建物入口付近、建物入口を正面から写したもの、テナント表示。テナント表示がない場合は、商号が判読できるポストや集合郵便受けを写します。2つめは事務所の入口で、商号等を掲示した入口部分。従たる営業所は営業所名等も掲示し、判読できる状態にします。
3つめが事務所の内部です。概要が確認できるよう複数方向から写し、執務スペースと応接スペースがそれぞれ分かるようにします。ブラインドやカーテンは開けた状態で撮ることとされています。
さらに、営業所が他の法人や個人事業主と同一階にある場合、または住居と同一建物内にある場合は、間取り図(手書き可)、入口から事務所までの動線部分の写真、営業所スペースが住居スペースや他法人等と明確に区分されていることが分かる写真も添付します。自宅兼事務所の方は、この3点が実質的な本番だと考えておくとよいと思います。
使用権原の資料と自宅兼事務所
営業所の確認資料は、法人なら登記事項証明書、個人で商号(屋号)を登記していればその登記事項証明書です。これに営業所写真と、郵便番号・電話番号が確認できる名刺・封筒等の写し(提示のみ)が加わります。
登記上の場所とは別の場所に事実上の営業所がある場合は、使用権原の資料が必要です。自己所有なら建物の登記事項証明書、または固定資産物件証明書か固定資産評価証明書。賃貸なら賃貸借契約書の写しで、使用目的が事業所用または店舗用であることが求められます。住居用の契約なら、事業所使用の特約があるか賃貸人からの承諾書が必要です。住居専用契約は原則として認められず、都営住宅やUR賃貸住宅などの公的賃貸住宅も原則として営業所としての利用が認められない旨が明記されています。官公庁の証明書は発行後3か月以内、賃貸借契約書は有効な契約期間内のものが必要です(自動更新条項があれば期間経過後も可)。契約者の名義も確認しておきたい点です。
自宅兼事務所では、玄関から事務所スペースまでの動線を説明できること、居住部分と区別されていること、外から建設業の営業所と分かる表示があることが鍵です。表札の隣に社名の看板を出す程度でも意味は大きいと思います。なお、営業所の実態が申請書上で把握できないときなどは立入調査が行われることがある、という記載もあります。
バーチャルオフィスと従たる営業所
バーチャルオフィスやシェアオフィスが難しい理由も、ここまでの要件と照らせば見えてきます。住所と郵便物の受取だけで、来客を迎えて契約を締結するスペースがない。他社と区分された専用区画がない。看板を掲出できない。個室型で専有区画があり看板も出せるタイプなら検討の余地はありますが、契約内容と現地の状況次第です。
本店以外に従たる営業所を置く場合は、その営業所ごとに営業所技術者等(専技)を常勤で置き、加えて令3条の使用人(その支店等で契約締結等の権限を与えられた者)を配置する必要があります。令3条の使用人はその営業所への常勤が必要で、他の営業所との兼務はできません。営業所を増やすことは、場所ではなく人を増やすことだと考えたほうが実態に近いです。
つまずきやすい点
相談を受けていて多いのは、賃貸借契約の使用目的が「住居」のまま、看板や表札がなく外から建設業の営業所と分からない、固定電話がなく業務用と確認できる資料もない携帯番号だけ、居住部分と事務所部分の区分が曖昧で写真でも説明できない、といったところです。いずれも気づいた時点で手を打てば整えられますが、賃貸人からの承諾書のように相手のある話は時間がかかります。書類作成に入る前に確認しておくと日程が読みやすくなります。
まとめ
営業所は規模の大小ではなく、そこで請負契約の締結や見積書を出しているかで判断されます。写真はその実態を伝えるための資料で、建物の全景から入口、内部、区分の状況までを一つの流れとして示すものと考えると、撮るべきものが見えてきます。
なお、ここまでの内容は東京都都市整備局の令和8年度版の手引きに基づくものです。営業所の確認資料、とりわけ写真は許可行政庁ごとの独自ルールがもっとも出やすい部分で、求められる枚数や構図、貼付用紙の様式、使用権原資料の扱いは、都道府県や国土交通大臣許可(各地方整備局)によって運用が異なります。東京都以外で申請される場合は、必ず所在地を管轄する行政庁の手引きをご確認ください。
当事務所では、営業所の要件確認や写真の撮り方のご案内を含め、建設業許可申請のサポートを行っています。自宅兼事務所で申請できるか迷っている、写真の準備で手が止まっているという方は、現地の状況を伺いながら一緒に整理します。お気軽にご相談ください。



