建設業許可を取ろうと動き始めた会社が最初につまずくのは、たいてい技術者の要件です。経営業務の管理責任者は社長で何とかなりそうだけれど、技術の方は誰を立てればいいのか分からない。そうしたご相談をよくいただきます。
この記事は、一般建設業の専任技術者だけに絞って整理します。なお本記事は、東京都都市整備局が公表している「建設業許可申請・変更の手引」(令和8年度版)を基に記載しています。求められる資料や細かい運用は許可行政庁ごとに独自の違いがあるため、東京都以外で申請する場合は必ずその行政庁の手引をご確認ください。
ちなみに東京都の手引では、専任技術者は「営業所技術者等(専技)」と表記されています。考え方は変わりませんが、旧名称の解説記事と読み比べると混乱しやすい点です。
一般建設業の専任技術者になる3つのルート
建設業法第7条第2号は、専任技術者になれる人を三つに分けます。①許可を受けようとする業種に関する指定学科を修めて卒業し、高校・中等教育学校卒なら5年以上、大学・高等専門学校卒なら3年以上の実務経験がある人。②その業種に関して10年以上の実務経験がある人。③国土交通大臣が①②と同等以上と認定した人、つまり所定の国家資格等を持つ人です。どれか一つで足りますが、実際は①のつもりが指定学科に当たらなかった、③のつもりが資格の業種違いだった、というケースが目立ちます。
指定学科は「学科名が似ている」だけでは通らない
指定学科は、土木工学・建築学・都市工学・電気工学・機械工学・衛生工学・林学・鉱山学といった区分ごとに認められる業種が決まっています。建築学のように多くの業種で使えるものもあれば、林学のようにごく限られた業種にしか使えないものもあります。
手引には類似学科の一覧も載っており、学科名の末尾の「科」「学科」「工学科」は互いに置き換えてよい一方、森林工学科・農林工学科・農業工学科・林業工学科の四つは置き換えできないと明記されています。学校の種別にも制限があり、大学院や職業訓練校、各種学校は対象外です。判断に迷う学科名なら卒業証明書と成績証明書を持って事前相談する流れで、判定に2週間から1か月かかるとされています。
実務経験10年は「業種ごとに」10年
資格も指定学科もない場合に残るのが実務経験10年のルートですが、誤解されやすいのは10年が業種ごとに必要だという点です。建設業を10年続けていれば全業種で使えるわけではありません。期間の重複もできないため、2業種を実務経験だけで取るなら原則20年分の経験と証明資料が要ります。
例外的に、業種間で経験を振り替えられる組合せもあります。合わせて12年以上、うち対象業種で8年を超える経験があることが条件で、組合せも土木一式から「とび・土工」「しゅんせつ」「水道施設」へ、建築一式から「大工」「屋根」「内装」など、と限定されています。指定学科による年数短縮との併用もできません。なお附帯工事の経験は証明に使えず、電気工事や消防施設工事では無資格者の実務経験は原則認められません。
実務経験に入るもの・入らないもの
手引は実務経験を、許可を受けようとする建設工事の施工に関する技術上の経験と定義しています。施工を指揮・監督した経験と実際に施工に携わった経験で、現場監督技術者の経験も含まれます。工事現場の単なる雑務や事務は含まれません。
証明は二階建てです。その期間にその業種の工事を行っていたことを示す資料(許可があった時期は許可通知書、なければ請負契約書・注文書・請求書と入金資料など)と、常勤していたことを示す資料の両方を年数分そろえます。
許可を持っていなかった期間の証明が実務では重くなります。原則は請求書等1件で1か月分の経験と数え、請求書と入金確認資料を1か月ずつ1セットにして必要月数分そろえます。10年なら120セットです。ここで効いてくるのが「経営経験・実務経験期間確認表」で、これを提出すれば資料の間隔が四半期(3か月)未満である限り、間の請求書等の写しを省略できます。経管の経営経験の証明で使われることが多い書類ですが、専任技術者の実務経験でも同じように使えます。
ただし専任技術者の場合、請求書等の件名や内訳書から証明しようとする業種の建設工事であることが明確に分かる必要があります。経管の経営経験は建設工事の請負だと分かれば業種を問われないため、同じ資料集めでも専任技術者のほうが条件は厳しくなります。
「専任」とは何を指すのか
専任の者とは、その営業所に常勤して専らその職務に従事する者をいい、同じ法人でも他の営業所の技術者を兼ねることはできません。営業所から著しく遠距離で通勤不可能な場所に住む人、他に個人営業を行う人、他社の技術者や常勤役員になっている人は、専任かつ常勤とみなされません。管理建築士や宅地建物取引士との兼任も、同一法人の同一営業所を除いて認められません。
逆に同じ営業所の中では柔軟で、一人で複数業種の要件を満たしていれば複数業種を兼ねられますし、経営業務の管理責任者との兼務も同一営業所内なら一人で担えます。現場の主任技術者との兼務は、その営業所で契約した工事であること、営業所と現場が近接していること、常時連絡が取れる体制にあることなどを条件に認められる取扱いがあります。ただし手引本体に細かい条件はないため、兼務させる場合は許可行政庁へ確認してください。
常勤性はどう確認されるか
申請日現在の常勤性は、法人であれば標準報酬決定通知書や住民税特別徴収税額通知書(徴収義務者用)など、その法人に所属していることが分かる資料で確認されます。その資料に生年月日の記載がなければ、健康保険の資格確認書・運転免許証・住民票のいずれかを併せて出します。
令和8年度版の手引きでは、健康保険証の写しとマイナ保険証の表面は確認資料の一覧から外れています。※最新情報は公式サイトをご確認ください。
つまずきやすいのはこの3つ
1つ目は、過去の勤務先の協力が必要になること。実務経験証明書には当時の使用者が証明者として関わるため、廃業や関係の断絶があるとそこで話が止まります。2つ目は資料が年数分そろわないこと。前職時代の請求書まで残している人はまれです。3つ目が資格の業種違いです。
なお令和5年7月から、技術検定の第一次検定合格者を指定学科卒業者と同等に扱う運用になっています。1級第一次検定の合格者は大学の指定学科卒と同等で合格後3年、2級は高校の指定学科卒と同等で合格後5年です(指定建設業と電気通信工事業は除く)。社内に技士補がいる会社は確認したいところです。
まとめ
一般建設業の専任技術者には3つの入口がありますが、どれも「業種ごとに見る」点が共通しています。学科も資格も経験も、取りたい業種に結びついているかが分かれ目です。そして要件を満たすことと書面で証明できることは別問題で、時間がかかるのは後者になります。特定建設業の専任技術者は要件が異なるため、別の記事で改めて扱っています。
当事務所では、要件を満たす人がいるかの見極めから証明資料の集め方、申請書類の作成までお手伝いしています。建設業許可・経営事項審査・入札参加資格審査のサポートのページもあわせてご覧ください。誰を技術者に立てられるか判断がつかない段階でのご相談も歓迎です。まずは在籍している方の経歴と手元の資料を一緒に整理するところから始めます。



